この記事を書いた人:なかじぃ 家飲み研究家 / 家庭料理研究家むかしから、自宅に友人同僚を読んでの家のみで料理しながらの飲みが趣味。もちろん、日常の料理もしっかりと行います。サラリーマン時代にはサラリーマンNしまの毎日レシピで料理ブログで人気を博す。
手作りがいいかどうかは議論がありますが、作るのも一つの楽しみでもありますね!
夜中にSNSを眺めていて、タイムラインに流れてきた「干からびた宇宙人」のような画像。一度見たら忘れられないあのインパクトに、あなたも思わず「うわっ、何これ…でもちょっと美味そう?」と釘付けになったのではないでしょうか?
そして、その正体を知りたくて検索し、あわよくば手に入れたいと思ってAmazonや楽天を探し回り、結局どこにも売っていなくて途方に暮れている――もしそうなら、この記事はあなたのためのものです。
結論から言います。あの「宇宙人の干物」は、日本のスーパーでは売っていません。 なぜなら、あれは商品ではなく、作り手の遊び心が産んだ「作品」だからです。
でも、諦める必要はありません。売っていないなら、作ればいいのです。 実は、スーパーで買える「ある魚」を使えば、誰でも自宅のキッチンであの宇宙人を召喚可能です。
この記事では、週末珍味ハンターである私が、入手方法から「あの顔」を作るための禁断のテクニック、そして最後は絶品おつまみとして美味しくいただく方法まで、余すことなく解説します。さあ、今夜あなたのキッチンを実験室に変えましょう。
正体は「ジェニー・ハニヴァー」。なぜエイが宇宙人になるのか?

まず、私たちが立ち向かう相手の正体をはっきりさせておきましょう。ネットで話題になるあの宇宙人のような干物は、正確には「ジェニー・ハニヴァー(Jenny Haniver)」と呼ばれています。
これは最近のネットミームではなく、実は16世紀頃から存在する歴史あるものです。当時のヨーロッパの船乗りたちが、港で手に入れたエイを加工・乾燥させ、「未確認生物(UMA)の標本」や「悪魔の使い」と偽って観光客に売りつけていたのが始まりだと言われています。つまり、ジェニー・ハニヴァーの正体(Is-a関係)は、紛れもなく「ガンギエイなどのエイの干物」そのものなのです。
なぜ「顔」に見えるのか?
ここで多くの人が抱く疑問、「あの目や口は本物なのか?」についてお答えします。
結論から言うと、私たちが「目」だと思っている部分は、解剖学的には「鼻腔(鼻の穴)」です。 そして、「口」に見える部分は、そのままエイの口です。
エイは海底の砂の中に潜むため、本当の目は背中側(上側)についています。一方、腹側(下側)には口と鼻腔があります。この腹側の構造が、人間の顔の配置(目と口)に偶然似ているため、乾燥させて水分が抜けると、あのような「叫んでいるような表情」が生まれるのです。
この「鼻腔と目の誤解(Misconception)」こそが、ジェニー・ハニヴァーが何世紀にもわたって人々を騙し、魅了し続けてきた最大のトリックです。この構造を理解しておくことが、後ほど自作する際に「いい表情」を作るための重要な鍵となります。
エイの腹側と背側の対比図解

【実践編】スーパーのエイを宇宙人に改造する「召喚の儀式」

さあ、ここからは私が熱血指導員となって、あなたを「召喚の儀式(干物作り)」へといざないます。準備はいいですか? 手順は大きく分けて「入手」「下処理」「成形」「乾燥」の4ステップです。
Step 1: 入手 (The Hunt)
まずは素材となるエイを手に入れなければ始まりません。ターゲットは「ガンギエイ(別名:カスベ)」です。アカエイでも作れますが、ガンギエイの方がヒレの形が人型に近く、味もクセがなくて美味しいので初心者には最適です。
スーパーの鮮魚コーナーに行ってみてください。北海道や東北地方では一般的ですが、それ以外の地域では切り身しか売っていないこともあります。もし切り身しかなければ、鮮魚担当の方にこう頼んでみましょう。
「カスベを丸ごと一匹(姿のまま)取り寄せてもらえませんか?」
勇気がいりますか? 大丈夫です。彼らは魚のプロですから、「ああ、煮付け用ですね(まさか干して宇宙人にするとは思うまい)」と快く対応してくれるはずです。通販を利用する場合も、「北海道産 カスベ 姿」などで検索すると見つかります。
Step 2: 下処理 (The Wash)
ここが全工程の中で最も重要、かつ過酷なステップです。エイの体表は大量の「ぬめり」で覆われています。このぬめりが残っていると、乾燥中に腐敗したり、強烈なアンモニア臭の原因(Causality)となります。
- エイをボウルに入れ、大量の塩と酢をかけます。
- たわしを使って、親の仇のようにゴシゴシと擦り洗いをします。
- 水で流し、ぬめりが完全になくなり「キュッキュッ」という手触りになるまで、これを3〜5回繰り返します。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「もういいかな?」と思ってから、さらにあと2回は洗ってください。
なぜなら、この点は多くの人が見落としがちで、私自身、過去に手抜きをして干した結果、ベランダから異臭騒ぎを起こし、家族に激怒された経験があるからです。この「徹底的なぬめり取り」こそが、臭みのない美味しい干物を作る唯一の道です。この知見が、あなたの成功の助けになれば幸いです。
Step 3: 成形 (The Craft)
ぬめりが取れたら、いよいよ命を吹き込みます。
- キッチンペーパーで水気を完全に拭き取ります。
- 腹側(顔に見える方)を上にして、干し網(100均で買えます)に入れます。
- ポージング: ここが腕の見せ所です。ヒレを少し持ち上げて網に引っ掛けたり、割り箸を使って固定したりして、立体感を出します。
- 表情作り: 口の中に丸めたキッチンペーパーを詰めると、乾燥した時に口が大きく開き、「叫んでいるような表情」になります。鼻腔(目)も指で少し広げておくと、パッチリとした目になります。
Step 4: 乾燥 (The Dry)
あとは風通しの良い日陰に干すだけです。季節や湿度によりますが、3日から1週間ほど放置します。
水分が抜け、体が飴色に透き通り、カチカチに硬くなったら完成です。干し網の中で徐々に痩せこけ、エイリアンのような形相に変化していく様は、まさに「未知との遭遇」。毎朝の観察が楽しみになること請け合いです。
召喚の儀式:ぬめり取りから乾燥まで

【実食編】完成した宇宙人を炙って食らう。味は…絶品エイヒレ!?

ついに召喚に成功したあなた。目の前には、カラカラに乾いた不気味な宇宙人が横たわっているはずです。ここからは、食通の友人としてレポートします。
「こんなグロテスクなもの、本当に食べられるの?」と不安になるかもしれません。しかし、トースターに入れて数分炙ってみてください。断末魔が聞こえてきそうですが、次第に香ばしい、食欲をそそる香りが漂ってきます。
いざ、実食
焼き上がった宇宙人は、熱いうちにキッチンバサミで解体します。硬いので気をつけて。一口サイズに切ったら、炙ったエイとの相性(Pairing)が抜群である「マヨネーズと七味唐辛子」を添えていただきましょう。
口に入れると、まず感じるのは香ばしさ。そして噛み締めると、ジュワッと溢れ出す濃厚な旨味。
「…えっ、美味い!?」
そう、これこそが自作(DIY)ならではの優位性(Superiority)です。市販のエイヒレは、調味液に漬け込まれていて甘く、薄っぺらいものが多いですが、自作した干物は素材そのものの味が凝縮されています。肉厚な身の繊維感と、軟骨のコリコリとした食感のコントラストは、市販品では絶対に味わえません。
見た目は最恐のゲテモノですが、味は最高の珍味。このギャップこそが、苦労して作った者だけが味わえる至福の報酬なのです。
市販のエイヒレ vs 自作の宇宙人干物
| 比較項目 | 市販のエイヒレ | 自作の宇宙人干物(ジェニー・ハニヴァー) |
|---|---|---|
| 見た目 | 均一なシート状、加工品 | 圧倒的インパクト、個性的 |
| 味付け | 甘辛い調味液の味 | 素材本来の旨味と塩気 |
| 食感 | 薄くて柔らかい | 肉厚でジューシー、軟骨の歯ごたえ |
| 体験価値 | 食べるだけ | 作る過程も楽しめる(ネタになる) |

エイの干物作りに関する「よくある質問」
最後に、これから挑戦するあなたが抱えるであろう不安に、アドバイザーとしてお答えします。
Q. 毒はないのですか?
A. 尾の棘(トゲ)に注意が必要です。
アカエイなどのエイには、尾に毒のある棘があります。スーパーで売られているカスベ(ガンギエイ)は、通常この棘や尾自体が処理されていることがほとんどですが、念のため調理前に確認してください。もし棘が残っていたら、ペンチなどで最初に取り除きましょう。身自体に毒はありません。
Q. 部屋が臭くなりませんか?
A. ぬめり取りさえ完璧なら大丈夫です。
先ほども触れましたが、臭いの原因は「ぬめり」と「内臓」です。内臓を取り除き(通常は処理済みで売っています)、ぬめりを完全に落とせば、干している間は「魚屋さんの店先」程度の匂いで済みます。どうしても心配な場合は、ベランダや軒下など屋外で干すことをお勧めします。
Q. どの種類のエイでも作れますか?
A. ガンギエイ(カスベ)がベストです。
アカエイでも作れますが、アンモニア臭が出やすく、身も少し水っぽい傾向があります。ガンギエイは軟骨も美味しく食べられ、形も整えやすいので、最初の1匹には最適です。
まとめ:週末はキッチンで「未知との遭遇」を楽しもう
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
「宇宙人の干物」の正体は、私たちがよく知るエイであり、そしてそれは自分で作って食べると最高に美味いということがお分かりいただけたでしょうか。
売っていないからといって諦める必要はありません。むしろ、売っていないからこそ、自分で作る価値があるのです。
今度の週末、スーパーの鮮魚コーナーを覗いてみてください。もしそこで運命の出会い(カスベ)があったなら、迷わず連れて帰ってください。手間をかけて作り上げた宇宙人を肴に飲むお酒は、きっといつもの何倍も美味しく感じるはずです。
完成したら、ぜひSNSにアップして自慢してくださいね。そしてその後に、頭からガブリと美味しくいただいてください。よい晩酌を!
[参考文献リスト]


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