ニシンの歴史を肴に一杯。群来復活とプロ直伝『身欠きニシン』極上の戻し方

ニシンの歴史を肴に一杯。群来復活とプロ直伝『身欠きニシン』極上の戻し方 おいしいもの
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この記事を書いた人:なかじぃ 家飲み研究家 / 家庭料理研究家 

むかしから、自宅に友人同僚を読んでの家のみで料理しながらの飲みが趣味。もちろん、日常の料理もしっかりと行います。サラリーマン時代にはサラリーマンNしまの毎日レシピで料理ブログで人気を博す。
また、釣り人でもり、釣竿を担いで一人旅で日本をまわり、各地のグルメも堪能しています!さすがにニシンはつれないのでいろいろ調べてみました。


最近、夕方のニュースで北海道の海が白く染まる「群来(くき)」の映像を目にしませんでしたか? あるいは、スーパーの鮮魚コーナーで、立派な銀色に輝く「生ニシン」を見かけ、「そういえば昔はニシン御殿が建つほど獲れたと聞くけれど、今はどうなっているんだろう? どうやって食べるのが一番美味しいのだろう?」と足を止めたことはないでしょうか。

かつて「幻の魚」となりかけたニシンですが、実は今、奇跡的な復活を遂げつつあります。そして、その波乱万丈な歴史を知り、少しの手間をかけて味わうニシンは、単なる魚料理の枠を超えた「極上の酒肴」となります。

特に、ハードルが高いと思われがちな「身欠きニシン」。実は、ご家庭にある「米のとぎ汁」と「番茶」を使うだけで、料亭のようなふっくらとした味わいに戻すことができるのです。今夜は、北前船が運んだ歴史のロマンを肴に、プロ直伝の技でニシンを味わい尽くしてみませんか。

なぜ京都や会津の名物に?北前船が運んだ「ニシン」の物語

ニシンの山椒づけ

「ニシンは骨っぽくて苦手だ」そんな声をよく耳にします。私も仲買人になりたての頃はそう思っていました。しかし、この魚が日本の食文化に刻んだ深い足跡を知れば、その小骨一本一本さえも愛おしく思えてくるはずです。

江戸時代から明治にかけて、北海道(蝦夷地)と大阪を結んだ「北前船」。この船が運んだ最大の積荷こそが、ニシンを加工した肥料「〆粕(しめかす)」と、食用の「身欠きニシン」でした。北前船は単に物を運んだだけでなく、ニシンという食材を通じて、遠く離れた地域に新たな食文化を定着させる「文化の伝播者」としての役割を果たしたのです。

例えば、海のない京都市で「にしんそば」が名物となっているのはなぜでしょうか。それは、北前船によって運ばれた身欠きニシンが、保存の効く貴重なタンパク源として重宝されたからです。また、福島県会津地方の郷土料理「ニシンの山椒漬け」も同様です。新潟港で陸揚げされたニシンが、阿賀野川を遡って会津へ運ばれ、独特の保存食として根付きました。

私たちが今、ニシンを口にする時、それは単なる魚を食べているのではありません。かつて日本経済を支え、地域ごとの豊かな食文化を育んだ、壮大な歴史の物語を味わっているのです。

「群来(くき)」の奇跡的な復活。今、国産ニシンを食べるべき理由

ニシンの歴史を肴に一杯。群来復活とプロ直伝『身欠きニシン』極上の戻し方

「ニシンはもう獲れない魚」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。確かに、昭和30年代を境にニシン漁は一度途絶えました。しかし、諦めずに続けられた放流事業と資源管理の努力が、今、実を結び始めています。

北海道立総合研究機構などのデータによれば、1990年代後半から日本海側でニシンの産卵群が確認され始め、近年では小樽や石狩の海岸が産卵による放精で白く濁る「群来」が頻繁に見られるようになりました。これは、かつて姿を消したニシン資源が、人間の手による保護と自然の回復力によって、再び私たちの食卓に戻ってきたことを示す希望の象徴です。

漁獲量は全盛期には及びませんが、スーパーで「北海道産 生ニシン」を見かける機会は確実に増えています。今、私たちが国産のニシンを選んで食べることは、この復活した資源を大切に守り育て、次世代へとつないでいく「食べて応援する」活動そのものなのです。

【目利き】「目が赤い」は鮮度落ち?スーパーで役立つ生ニシンの選び方

ニシンの歴史を肴に一杯。群来復活とプロ直伝『身欠きニシン』極上の戻し方

さて、スーパーで生ニシンを選ぶ際、皆さんはどこを見ていますか? よく「魚は目を見ろ」と言われますが、ニシンに関しては少し事情が異なります。

「目が赤く充血しているから、鮮度が悪いのではないか」と不安になり、購入を見送った経験はありませんか? 実は、生ニシンに見られる目の充血は、鮮度低下のサインではなく、網にかかった際の圧力や興奮によって起こる漁獲時の特性であることが多いのです。 目の赤さだけで判断して新鮮な個体を見逃してしまうのは、非常にもったいないことです。

では、どこを見ればよいのでしょうか。プロが必ずチェックするのは「エラ」と「体の輝き」です。

生ニシンの正しい目利きポイント図解

 

新鮮なニシンの特徴(鮮やかな赤いエラ、銀色の体表)と、避けるべき特徴(茶色いエラ、窪んだ目)を比較したイラスト解説。

 

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 目の赤さは気にせず、エラ蓋をめくって「鮮血のような赤色」をしているかを確認してください。

なぜなら、この点は多くの人が見落としがちで、目が綺麗でもエラが茶色く変色していれば、それは鮮度が落ちている証拠だからです。逆に目が赤くても、エラが鮮やかで腹にハリがあれば、それは極上の刺身候補です。この知見が、あなたの成功の助けになれば幸いです。

【保存版】米のとぎ汁と番茶が決め手。プロ直伝「身欠きニシン」の戻し方

ニシンの歴史を肴に一杯。群来復活とプロ直伝『身欠きニシン』極上の戻し方

ここからは、いよいよ本題です。干物コーナーでカチカチに乾燥した「本乾(ほんガ)身欠きニシン」を見かけても、「戻し方が難しそう」「臭みが出そう」と敬遠していませんか?

確かに、ただ水に漬けるだけでは、独特の酸化臭やエグみが残ってしまいます。しかし、身欠きニシンと「米のとぎ汁・番茶」は、切っても切れない関係にあります。これらを使うことで、科学的に臭みの元を断ち、驚くほど上品な味わいに生まれ変わらせることができるのです。

これが、私が長年実践し、料亭でも使われている「極上の戻し方」です。

プロ直伝!身欠きニシンの戻し方フローチャート

身欠きニシンの戻し方3ステップ。1.米のとぎ汁に漬ける、2.ウロコを取る、3.番茶で煮る工程を描いたフローチャート。

なぜ「米のとぎ汁」と「番茶」なのでしょうか。
米のとぎ汁に含まれる成分は、干物の表面で酸化した脂質を分解し、臭みを抜く効果があります。そして番茶に含まれる「タンニン」は、魚特有の生臭さを吸着し、さらに身をキュッと引き締めて煮崩れを防ぐ役割を果たします。

このひと手間をかけるだけで、煮物にしても、甘露煮にしても、口に入れた瞬間に広がるのは不快な臭みではなく、凝縮されたニシンの旨味だけになります。

刺身で食べるなら必須!アニサキスリスクを回避する冷凍ルール

新鮮な生ニシンが手に入ったら、ぜひ挑戦していただきたいのが「刺身」です。トロリとした脂の甘みは、他の魚では味わえない絶品です。しかし、ここで絶対に避けて通れないのが「アニサキス」のリスクです。

生ニシンとアニサキスは、残念ながらセットで考えるべき問題です。 酢で締めたり、よく噛んだりするだけでは、この寄生虫を完全に防ぐことはできません。

安全に生食を楽しむための唯一にして最強のルール、それは「冷凍」です。

アニサキス幼虫は、-20℃で24時間以上冷凍すると死滅します。

出典: アニサキスによる食中毒を予防しましょう – 厚生労働省

ただし、ここで注意が必要です。家庭用の冷凍庫は開閉によって温度が上がりやすく、常に-20℃をキープできているとは限りません。そのため、私は安全マージンをとって「48時間以上」の冷凍を強く推奨しています。

丸ごとの魚を捌いてサク(切り身)の状態にし、ラップでぴっちりと包んで冷凍庫へ。48時間後、冷蔵庫でゆっくり解凍すれば、アニサキスの心配なく、極上の脂を堪能できます。

今夜は歴史を肴に。ニシンが教えてくれる「通」な晩酌の楽しみ

かつて日本の食文化を支え、一度は姿を消し、そして今また私たちの前に姿を現したニシン。
その歴史を知り、スーパーで正しい目利きを行い、先人の知恵である「米のとぎ汁と番茶」を使って丁寧に仕込む。この一連のプロセスこそが、ニシンを味わうということの真髄です。

手間をかけて戻した身欠きニシンを炊き合わせにし、お気に入りの日本酒を添えてみてください。口に運べば、北前船が往来した荒波のロマンと、復活した群来の力強さが、じんわりと染み渡るはずです。

今度の週末は、スーパーでニシンを探してみませんか? 手間をかけた一皿があれば、ご自宅の晩酌が、かつてのニシン御殿にも負けない贅沢な時間に変わることでしょう。


[参考文献リスト]

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