この記事を書いた人:なかじぃ 家飲み研究家 / 家庭料理研究家むかしから、自宅に友人同僚を読んでの家のみで料理しながらの飲みが趣味。もちろん、日常の料理もしっかりと行います。サラリーマン時代にはサラリーマンNしまの毎日レシピで料理ブログで人気を博す。
スーパーの精肉コーナーで、普段は見かけない「せせり」を見つけて、思わずカゴに入れたあなた。本当にお目が高いですね。
でも、いざ家に帰ってパックを開けたとき、その中身を見て少し戸惑っていませんか?
「なんか形が複雑で、どこを切ればいいのかわからない…」
「白い筋や脂がたくさんついていて、このまま焼いて大丈夫なのか?」
もし、あなたがパックから出した肉をそのままフライパンに放り込もうとしているなら、ちょっと待ってください。それは、せせりのポテンシャルの半分も引き出せない、非常にもったいない行為です。そのまま焼くと、独特の臭みが残り、硬い筋や骨が口に当たって、せっかくの晩酌が台無しになってしまうかもしれません。
安心してください。元焼き鳥職人の私が、スーパーのパック肉を「極上の居酒屋串」に変えるための、ちょっとした「手術(下処理)」の手順を伝授します。少し手間はかかりますが、その価値は私が保証します。今夜は、プロの味で最高の乾杯をしましょう。
せせり(ネック)とは?一羽からわずかしか取れない「旨味の塊」

まずは、あなたが手にしたその肉の正体について、少しだけ解説させてください。敵を知れば、料理はもっと楽しくなります。
「せせり」とは、その名の通り鶏の「首(ネック)」の筋肉です。
鶏が餌をついばむときや、首を回すとき、この筋肉は絶えず動き続けています。そのため、もも肉以上に身が引き締まっており、強い弾力を持っているのが特徴です。
さらに、よく動く筋肉には良質な脂が乗りやすいため、噛めば噛むほど濃厚な肉汁が溢れ出します。この「弾力」と「脂の旨味」のバランスこそが、せせりが焼き鳥好きを虜にする理由です。
しかし、一羽の鶏から取れるせせりの量は、わずか20g〜100g程度。「小肉(こにく)」とも呼ばれるこの部位は、その希少性ゆえに、一般的なスーパーにはなかなか並びません。また、首の骨周りにある複雑な形状の肉であるため、機械で綺麗に取ることが難しく、手作業での採取が必要になることも、流通量が少ない理由の一つです。
つまり、今日あなたがスーパーでせせりに出会えたのは、とてもラッキーなことなのです。だからこそ、その価値を最大限に活かす食べ方を知っていただきたいのです。
【最重要】食べる前に知っておくべき「67%」のリスクと安全性

美味しい話の前に、プロとして一つだけ、厳しい話をさせてください。これはあなたと、あなたの大切な人の健康を守るための話です。
「新鮮な鶏肉なら、少しレアでも美味しい」
もしそう思っているなら、その認識は今すぐ捨ててください。特にせせりのような筋肉質の部位は、食中毒の原因となるカンピロバクターのリスクと常に隣り合わせです。
厚生労働省の研究班による調査では、市販されている鶏肉の約67%からカンピロバクターが検出されています。
市販鶏肉からカンピロバクターが高い確率(20〜100%、平均67.4%)で検出されました。
出典: 鶏肉は十分に加熱して提供しましょう – 厚生労働省
つまり、「新鮮だから安全」という理屈は通用しません。むしろ、新鮮な菌が生きていると考えた方がいいでしょう。
せせりとカンピロバクターは、切っても切れないリスク関係にあります。
安全に食べるための唯一の条件は、「中心温度75℃で1分以上」加熱すること。家庭の調理で温度を測るのは難しいですが、目安としては「肉の色が中心まで完全に白く変わり、出てくる肉汁が透明になるまで」焼くことです。
脅すようなことを言いましたが、正しく加熱さえすれば、菌は死滅します。恐れる必要はありません。「中までしっかり焼く」。これだけを約束して、次のステップへ進みましょう。
スーパーの肉が劇的に変わる!プロ直伝「3ステップ下処理」

さあ、ここからが本番です。スーパーで買ったパック肉を、お店のクオリティに引き上げるための「下処理」を行います。
多くの人が「面倒くさい」と敬遠しますが、この工程こそが、臭みを消し、食感を劇的に変える魔法です。包丁とまな板を用意して、私と一緒にやってみましょう。
ステップ1:骨の探索と除去
スーパーのせせりは、骨から肉を削ぎ落として作られるため、どうしても「軟骨」や「背骨の欠片」が残っていることがあります。
- まず、肉を指で優しく揉むように触ってください。
- 指先に「コツッ」とした硬い感触があったら、それが骨です。
- 骨の周りに包丁を入れ、少し肉ごと削ぎ落としてください。
この「指での検品」をサボると、食べた瞬間にガリッとして、せっかくの気分が台無しになります。
ステップ2:筋切りとカット
せせりには、白い筋(すじ)が通っています。これをそのまま焼くと、加熱で縮んで肉が丸まり、食感もゴムのように硬くなってしまいます。
- 白い筋に対して、繊維を断つように垂直、または斜めに包丁を入れます。
- 一口大にカットする際も、筋を断ち切る角度で切るのがコツです。
こうすることで、焼いた時に肉が縮まず、驚くほど柔らかい食感になります。
ステップ3:脱水(酒と塩)
これがプロの最大の秘訣です。下処理における「酒と塩」は、単なる味付けではなく、肉の水分を抜くための「脱水装置」として機能します。
- カットした肉をボウルに入れ、肉200gに対して塩小さじ1/2、酒大さじ1を振ります。
- 軽く揉み込み、そのまま15分放置します。
- 時間が経つと、肉から水分が出てきます。この水分に「鶏特有の臭み」が含まれています。
- 最後に、キッチンペーパーで表面の水分をしっかり拭き取ってください。
このひと手間で、臭みが完全に消え、旨味だけが凝縮された「プロの肉」に生まれ変わります。
プロ直伝!せせりの3ステップ下処理

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: どんなに急いでいても、「脱水後の拭き取り」だけは絶対にサボらないでください。
なぜなら、水分が残ったまま焼くと、フライパンの中で肉が「蒸し焼き」状態になり、香ばしさがつかないばかりか、臭みが肉に戻ってしまうからです。私が修行時代、親方に一番怒られたのがこの「水気取り」でした。ペーパーでしっかり拭く。これだけで仕上がりが天と地ほど変わります。
フライパンで再現!外はカリッ、中はジューシーな「極上塩焼き」

下処理お疲れ様でした!もうあなたの手元にあるのは、スーパーの肉ではありません。極上の食材です。あとは、これを最高に美味しく焼くだけです。
炭火がなくても大丈夫。フライパンで十分に再現できます。
- 道具の準備:
できれば鉄のフライパンがベストですが、テフロン加工のものでも構いません。油を薄く引いて、中火でしっかり温めます。 - 皮目から焼く:
せせりには脂の多い面(皮目)があります。こちらを下にして並べます。ジューッといういい音が聞こえるはずです。あまり触らず、焼き色がつくまで我慢してください。 - 脂のコントロール:
焼いていると、驚くほど脂が出てきます。この脂を放置すると、ギトギトした仕上がりになってしまいます。キッチンペーパーでこまめに余分な脂を拭き取ってください。これで味がクリアになります。 - 裏返して安全確認:
こんがり焼き色がついたら裏返します。ここで火を少し弱め、中まで火を通します。
安全のサインは「肉汁」です。 肉の厚い部分を少し押してみて、出てくる肉汁が透明ならOK。濁っていたり、赤みがある場合は加熱不足です。もう少し焼きましょう。 - 仕上げ:
シンプルに塩だけで十分美味しいですが、お好みで黒胡椒や、柚子胡椒を添えて完成です。
せせりに関するよくある質問(Q&A)
最後に、私がよく聞かれる質問にお答えしておきます。
Q: せせりは脂が多いですが、カロリーは高いですか?
A: はい、ささみや胸肉に比べるとカロリーは高めです(100gあたり約215kcal)。しかし、糖質はほぼゼロです。脂の旨味で満足感が高いので、食べ過ぎなければダイエット中でも問題ありません。ビールが進みすぎる点だけご注意を(笑)。
Q: スーパーに売っていない時はどこで買えますか?
A: 業務スーパーや、精肉店(お肉屋さん)なら置いている確率が高いです。また、確実に手に入れたいならネット通販がおすすめです。冷凍でストックしておくと便利ですよ。
Q: 塩焼き以外のおすすめレシピはありますか?
A: せせりの強い弾力は、炒め物にも最適です。「せせりとネギの塩炒め」や、唐揚げにしても絶品です。鍋に入れても良い出汁が出ますが、煮込みすぎると硬くなるので注意してください。
ひと手間で家飲みが変わる。今夜は「せせり」で乾杯しよう
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
「骨を取って、筋を切って、酒に漬けて…」
正直、読むだけで面倒だと思ったかもしれません。
でも、そのひと手間をかけた後の「せせり」を一口食べれば、その苦労は一瞬で吹き飛びます。
「これ、俺が作ったの? お店みたいじゃん!」
そう思わず声が出てしまうはずです。
スーパーで買った数百円のパック肉が、あなたの手によって極上のつまみに変わる。その達成感こそが、家飲みの醍醐味です。
さあ、冷蔵庫からビールを出して、準備はいいですか?
今夜は、あなたがマスターした「極上のせせり」で、最高の晩酌を楽しんでください!


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